好きな食べ物はじゃがバター。
こんにちは、書道家の長谷川悠貴です。
今回は僕の作品を例にしながら書道の「表現方法」についてお伝えしたいと思います。
書道ってよく分かんない・・・
という方でも楽しんで頂けるんじゃないかなと思います!
【書写(習字)と書の違い】
「習字」「書写」「書道」という言葉を聞いたことがあると思うのですがこれらの違い
をご存知でしょうか?
まず「習字」と「書写」に関して、これらは基本的には同じと考えてOKです。
しかし、先の2つに対して「書道」はちょっと違います。
習字・書写はどちらも「綺麗に字を書く」ことを目的としています。
小中学校では書写の名称で授業がありますよね。
書いた字が誤字であったり読めない!とならないよう、「整った綺麗な字」を書けるよう国語科目の一部として扱われています。
しかし、高校に上がると「書写」から「書道」という「芸術」の分野に変わるんですね。
綺麗な字、整った字でなかったとしても個性のある字、魅力のある字も認められるようになります。
まさに芸術の領域です。
表現方法が多種多様になり、筆を扱う技術の数や難易度も断然上がります。
綺麗な字を書くこと1つを目的とした書写や習字というのは「書道」という世界のたった一部分にすぎないのです。
僕自身、小学校1年生から習字教室にずっと通っていましたが、ずっと「綺麗に整った字」しか知らなかったので、高校生になった時に字を使って『表現をする』という事、そしてそこには多種多様な技術があることを知った時に書道の世界にどっぷり浸かってしまいました。
【「風」を書で表現すると?】
まずはコレ。
これはノーマルな字体です。
一般的に綺麗な字と言っていいと思います。
これは勉強の過程としてはよいのですが、これでは「風」を「表現」出来ていません。
風には、
「穏やかな風」
「温かい春の風」
「突風」
「真冬の早朝の風」
といったようにそれぞれ全く違う意味を持つので、その表現に合った風を使い分けます。
これは単に字形の問題ではなく、情緒的に書で表現できるかどうかがポイントです。
では!
それぞれいろんな「風」を表現してみたので見てみたいと思います!
人それぞれイメージがあると思いますが、僕のイメージの「風」を表現しようと試みた作品です。
こんな感じで「風」という1文字でもたくさんの表現をすることができるんです。
【表現の仕方〜技術編〜】
このように表現をするためにはまず筆選びから始めます。
つまようじほどのとても細く、長い毛の筆もあれば、太く短い毛の筆もありますし選ぶだけでも迷います。
筆で書の表現が決まると言っても過言ではないくらい重要です。
筆の特徴、筆の個性を把握しそれぞれの筆によって扱い方を変え、個性を存分に引き立てることが必要です。
筆が動きたいように動かせてあげるので、筆を使うのではなく筆に使われるといってもいいかもしれません。
↑これは羊毛と呼ばれる筆です。
中国では「羊」と呼ばれていますが、日本では山羊(ヤギ)の種になります。
なので呼び名は「羊毛」ですが、実際にはヤギと認識して良いです。
この羊毛の筆は中級者以上の人ではもっともよく使われます。
毛が柔らかいためコントロールをするのが難しいですがその分使いこなせれば色々な線を出すことが出来ます。
表現が多様な筆です。
金額もピンキリで、上記写真の左の筆は3,000円、右の筆は20,000円です。
同じ大きさであっても毛の品質によって大きく金額が変わります。
これら羊毛筆の特徴は毛が柔らかくて、やや太い為ふっくらとした線を出すのが得意です。
この作品のポイントは、
①墨をたっぷりと付けて
②余計な力は入れずにやわらかく
③ゆっっっくりな所とスッと速度を上げるところ、速度の変化をつける
羊毛の筆はこの表現以外にも多種多様に表現できますが「春の日差しを浴びながら吹き抜ける風」感を出す際には大きくこの3つのポイントを付けると雰囲気が出てきます。
ちなみにこれは3,000円の方の筆です。
では、次!
これも羊毛筆ですが「長々鋒(ちょうちょうほう)」と呼ばれる細く長い筆を使って書いた作品を見てみます。
筆の太さ、長さが大きく異なり爪楊枝よりもちょっと太いくらいで、扱うのがめちゃめちゃ難しく、コントロールはほぼ不能になりますが細い文字の作品を書く時には適しています。
毛の長さはすごくありますが、実際に使うのは先端のごくわずかだけです。
先端だけを使い、力を掛けないことで、とても繊細な線が出せます。
ふわ〜〜〜〜と書くことで「穏やかな風」感が出て来ました。
ここからはちょっと特殊な筆になります!
まずこれはウサギの口髭(くちひげ)です。
あの口ひげです。
この毛はやわらかそうに感じますが実は芯が硬く反発力がすごくあります。
ツンツンした毛質です。
実際に書いてみた作品です。
ポイントは、
①筆圧を強く、力をグッと溜め
②そこから一気に速度を上げて
③直線的に払い出していく
そうすると鋭い線になります。
この線はウサギの口髭でしか出せません。
「肌に刺さる冷たい風」の雰囲気ですね。
そして次は動物の毛ではなく竹を割いた筆になります。
竹を割いただけなので1本1本がとにかく硬いです。
まとまりがありません。
バッサバサ。
それでは実際に書いてみたいと思います。
書き心地はカリカリ、カサカサ、すごく硬いです。
竹ふではとにかくバサバサした線を出せます。
他にも硬い動物の毛はいくつかあるのですが、こんな線にはならないんです。
ですが、一歩間違えると他の動物の毛(馬、山馬、猪、兼毫筆など)と大差ない線になって竹筆の特徴が出てこないんです。
①筆圧の掛け方
②速度
③筆の開き方
を気を付けて書くと、竹筆の一味違う面白さが出て来ます。
この3つのポイントは『筆にどれくらい墨が入っているか』によってそれぞれ調整が必要になります。
線を引くごとに墨は無くなっていくので、墨の残り具合を細かく感じ取りながら
「3つのポイントを同時に調整すること」が大切です。
ちなみに掃除で使うホウキでもこんな表現になります。
それでは次!
この筆は鶏の毛です。
え!?コレで書けるの!?と思ってしまいますが、
水や墨を付けると普通の筆と同じになるんです。
↑コレは水をつけた状態になりますが、墨でも同じです。
しかし毛に脂が含まれているので水や墨を吸収しづらいため少し時間をかけて含ませます。
この筆の最大の特徴は、「墨が無くなってきた時」です。
カスレの線に注目して見ていただきたいと思います。
この鶏の毛は、紙に押し当てながら線を引いても筆がわずかに上下動を始めるのです。
墨が無くなり始めた時が顕著に表れます。
カスレている線をよく見ると「浮き沈み」が見えてこないでしょうか?
ポコポコとしたカスレになっています。
これがこの筆の特徴です。
アップにして見てみて下さい!
わずかにですが、筆が勝手に上下動するんです。
紙に押し当てて線を引いている最中、急に筆が浮いてくるような感覚です。
初めて使った時は驚きました。。。
しかし、わずかなので
①自力で筆を上下動させ拍車をかけます
さらに、
②力を掛け過ぎないこと
この2つを意識することで『ポコポコ』した線がはっきり表れてきます。
この字も同じ鶏毛筆になります。
毛そのもののコシ(弾力)が全く無いことに加え、毛に脂がすごく含まれているので書き心地がペタペタ、ベタベタしています。
「じとじと・べたべたした湿度の多い真夏の風」には最適なため、こっちの表現では鶏毛筆の特徴的なカスレをあえて控えて、ペタンとした感じをそのまま出しました。
速度や力の掛け具合などで同じ筆でも雰囲気がガラリと変わりますよね。
そして、最後に筆の種類ではありませんが、表現の一つを紹介します!
その方法が筆を2本同時に扱うというものです。
お箸のように2本持って書くと1本では出せないおもしろい線が出ます。
↑最終画で一番顕著に表れています。
こういった豪快な線を出せるのも魅力です。
うまく扱わないと全ての線が割れてしまうので要注意です。
上の字は最終画以外の線は1本で書いたように見えると思いますが、全てお箸のように2本持ちなんです。
全部が全部割れるのは良くありませんが、ちょうど良い塩梅のバランスで割れた線を使うのはアリ!
割れた線を「破筆(はひつ)」と言います。
↑これも2本持ちで書いてますが、コレは完全な「破筆」が出てます。
このような感じで、イメージと表現をマッチさせるためには、
・表現に適した筆を選ぶこと
・その筆の特徴を生かす書き方をすること
そうすると情緒的な表現をすることができます。
同じ動物の毛であっても部位によって全く異なってきます。
書筆はヤギの毛(羊毛)が一般的ですが、ヤギとひとくくりに言ってもあごの毛、腹の毛、腕の方の毛、背中やお尻といった部位によって硬さも弾力も驚くほど変わります。
さらに筆の長さや太さによってもまるっきり表現方法が変わります。
上記の例はあくまでも1例で、同じ動物の毛であったとしても筆のサイズや作り方で全然違うので筆によって使い分ける技術も必要になります。
また、上記の筆は半紙くらいの作品を制作する際のサイズ感になるのでかなり安いですが、筆の大きさが大きくなればなるほど金額も高くなっちゃいます。
下記の筆はかなり大きいです。
価格は約50万円ほど。
ということで今回は、綺麗に書くことだけではなく、「書道」にはいろんな表現方法があるよ〜ということを少しでも知っていただければなと思います(^ ^)
では!
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